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それでもまだオリンピックを開催するというこの国の狂気

5月28日の新型コロナウイルスに関する首相記者会見(出典:首相官邸ホームページ)
5月28日の新型コロナウイルスに関する首相記者会見(出典:首相官邸ホームページ)

 5月31日の期限で発令されていた緊急事態宣言が、今日から6月20日まで延長された。それでもまだ政府は東京オリンピックを開催するつもりらしい。

 

 東京オリンピックの開幕は7月23日である。仮にこのあと順調にいって6月20日で緊急事態宣言が解除されたとしても、オリンピック開幕の1か月前まで東京都は緊急事態宣言下に置かれることになる。そんな状態で開催準備を粛々と進め、世界各国から10万人近い選手・関係者を招いて「世紀の祭典」を開催しよう、あるいは開催できるという考えが、正常な思考であるとは私にはとても思えない。

 そもそも安倍首相(当時)は、「東京オリンピックは、人類が新型コロナに打ち勝った証として、完全な形で開催する」と表明していた。さらには昨年の夏の時点で、「2021年の前半までに全国民のワクチンを確保する。早ければ年内(2020年中)にも接種を開始する」と明言していたのだ。「‥接種する」と言わずに「‥確保する」と言ったのは、ワクチン接種を希望しない人もいるので、全国民にワクチンを接種することは事実上不可能という、単にそれだけの理由だ。「2021年の前半まで(つまり6月末まで)」というのは明らかにオリンピックの会期を意識しての発言であり、つまり「オリンピックに間に合わせる」という意味だ。そう、少なくとも日本国内は安心安全な状態でオリンピックの開幕を迎える前提だった。

 

 その前提条件が崩れ去って医療現場がひっ迫している現状で、 なぜオリンピックが開催できると言えるのか。

 

 菅首相は安倍内閣の官房長官だったのだから、よもや安部前首相の発言を忘れたということはあるまい。であれば、「2021年前半までに全国民にワクチン」という政府の重大な約束を果たせず医療現場のひっ迫という緊急事態を招いている以上、「すみません、できませんでした」と素直に謝って、オリンピックは中止するしかない。