作・演出 永遠の昆虫少年
この記事は、みやくに通信№155(平成16年12月23日)に掲載されたものを、一部加筆修正のうえアップしたものです。
上司「最近はSARSやら鳥インフルエンザやらで、君の好きな東南アジアへも行きにくくなったな」
私 「いえ、全然大丈夫です」
上司「大丈夫じゃないって。可愛そうだが、しばらくおとなしくしていたほうがいい」
私 「いえ、全然心配ないっス」
上司「バカ言っちゃいかん。君のことを心配して言ってやってるんだぞ」
私 「SARSや鳥インフルなんて全然平気ですって。普段から向こうで、もっと危ない事してるんですから」
上司「…」
同僚「昨日はどうしたの? 急に休んだりして」
私 「ちょっと、病気が出てね」
同僚「病気?」
私 「いつもの事だよ」
同僚「いつもの事って、どこか悪いの?」
私 「あれっ、もしかして本当に心配してくれてる? 病気って、天気がいいと山へ行きたくなる病気だよ」
同僚「…」(怒りで言葉が出ない)
同僚「すみません、来週1週間ほど休暇をいただきたいんですが」
上司「1週間?! いったい急に何事だね」
同僚「はい。最近少し思うところがありまして、『自分探しの旅』に出たいと」
女子職員「きゃー、カッコいいー!」
私 「すみません、私も休暇をいただきたいんですが」
上司「君はいったい何事だ」
私 「はい。私は『チョウチョ探しの旅』に」
女子職員「きゃー、この人、変っー!」
上司「ところで、最近よく聞く “DV”って、これ何の略だね?」
私 「ドメスティック・バイオレンス『家庭内暴力』ですね」
上司「ドメスティックねえ。いまいち聞き慣れない単語だな」
私 「空港で国際線のインターナショナルに対して、国内線がドメスティックです。つまり『国内の』とか『家庭内の』とかいう意味ですね」
上司「おっ、さすが。しょっちゅう休暇取って東南アジアへ行っているだけのことはあるね」
私 「今のは係長にも分りやすい例でご説明したまでです。ちなみに、GDP『国内総生産』はグロス・ドメスティック・プロダクツの略です。経済学部卒なのでその方面も詳しいですから、念のため」
同僚「おー、アブナい、アブナい」
同僚A「海外旅行の最後に、どうしても外貨が少し余るでしょう。あれって、何とかならないのかなあ」
同僚B「初めての時は、記念にとっておいたりしたけどね」
同僚C「最後に空港で土産を買う時に残っている外貨で払って、不足分をカードで払えばいいんだよ」
同僚A「なるほど! そういう手があったか。そういえば、海外旅行は超ベテランの君はどうしてるの?」
私 「また次に行く時に使ったらいいやん」
同僚A「聞いた私がバカだった…」
同僚「この前、蝶の標本が展示されているのを見たんだけど、随分立派な箱に入ってるんだねえ。あれって、箱代だけでも相当なんじゃない?」
私 「私が使っている箱は、1箱7千円ほどですね」
同僚「7千円! それが君の家には何箱あるの?」
私 「ざっと、200箱かな」
同僚「200箱! ということは…箱代だけで140万円か。いやー、カネのかかる道楽だねえ」
私 「道楽ってのは、元々そういうもんでしょうが」
私 「ゴホン、ゴホン」
上司「風邪がなかなか治らないみたいだな」
私 「風土病なんです」
上司「えっ、風土病? まさか、この前のマレーシアで変な病気拾ってきたんじゃないだろうね」
私 「いえ、私の場合、向こうでは調子いいんですが帰ってくるとダメみたいで、日本の気候風土が体質に合わないんです」
上司「もしかして、『日本の風土病』って言いたいのか」
私 「はい。なので、また近いうちに向こうへ療養に行ってきます」
上司「あっ、そう」(あきれてモノも言いたくない)
私 「ハックション、ハックション」
上司「やれやれ、風邪が治ったと思ったら今度は花粉症か」
私 「この季節は最悪です」
上司「薬は飲んでるのか?」
私 「薬を飲むと、頭がボーッとして仕事にならないんです」
上司「青汁を飲むといいらしいぞ。体質改善とか、色々やってみるんだな」
私 「そんなことより、一発で治る方法があるんですけどね」
上司「ほう?」
私 「マレーシアへ行くと一発で治ります。向こうはスギもヒノキもないんで」
上司「…」(あきれてモノも言いたくないって言ってるだろう、このバカ!)
(平成16年12月23日「みやくに通信」№155より)