この記事は、よい子の蟲だより№220(2009年12月24日)に掲載されたものを、一部加筆修正してアップしたものです。
2008年は春先から自宅の建替えのために忙殺され、5月中旬から9月まで仮住まいで過ごしたこともあり、ほとんど採集に出かけられなかった。虫屋のはしくれとなってからこれまでの30数年間で、多分最も低調なシーズンとなってしまった。
さかのぼること4年前の2004年4月18日、東白川村から下呂町へと転戦したおり、国道41号を車を走らせながら飛騨川対岸にそこだけ周囲と植生の異なる場所があるのが目にとまった。急峻な山あいにあって、その場所だけが平坦で明るい疎林のように見えた。「あそこ、絶対にクサい!」とにらんだが、その時は東白川村で既にボロだったため、立ち寄ることなくそのまま通過した。
以来、その場所のことがずっと気になっていた。いくらなんでも主要幹線国道から丸分かりの無名ポイントなんてあり得ないと思いつつ、その日は東白川村久須見と下呂町久野川の2ポイントを見つけた日だったことを思うと、カンがさえていたのでもしかすると…、という気がしていた。
現地に着くとすぐに林床にカンアオイが見つかり、「ほら見ろ」と思ったまではよかったが、穏やかな晴天にもかかわらずギフはいっこうに現れない。いつものようにその場に雅恵を残し、私は近くの尾根に登ってみることにする。
10:30 私 :尾根で最初のギフを目撃するも、ネットチャンスなし
10:45 雅恵:麓で1♂採集(さすが! あんたはエラい)
10:46 私 :尾根で2頭目が現れるも振り逃がし(あんたはヘボい)
11:15 雅恵:麓で2頭目が現れるも振り逃がし(付き合わんでよろし)
12:20 尾根も麓もそれっきりで後が続かず。あきらめて転戦
4年間暖め続けたポイントで、好天にも恵まれ絶好のシチュエーションのわりには随分しょぼい結果に終わってしまった。付近の桜は3~5分咲き程度で、ギフは発生初期のようにも感じられた。
[記録]4月6日(日) 同行者 雅恵
岐阜県加茂郡白川町野原 ギフ 1♂(雅恵採集)
犬山カントリ―クラブ横の道路端をギフが飛ぶ。林内にカンアオイあり。ツツジに吸蜜するものあり、まずまずの環境なのだが、山の中の道にもかかわらず通り抜けの車なのか、いやに交通量が多くて採集しづらい。付近の桜は満開だった。
[記録]4月6日(日) 同行者 雅恵
愛知県犬山市今井 ギフ 2♂
4月6日(日)の白川町が本当に発生初期だったとすれば、6日後のこの日は最盛期かもしれない。そんな淡い期待を抱いて出かけたが、やっぱりそんなに甘くはなかった。7日(月)こそ雨だったが、8日(火)・9日(水)は好天で気温も高かったので、♂はこの両日でほぼ出切ったらしい。この日ネットした5♂のうちマシなのは1♂だけで、他はすべて4‐5日飛んでいる感じの個体ばかりだった。
[記録]4月12日(土) 同行者 雅恵
岐阜県加茂郡白川町野原 ギフ 5♂(内1♂リリース)
この日の朝、白川町のポイントに着いたときに1台のワゴン車が止まっていた。まさかと思ったらまさかの採集者で、しかもまさかの蟲の会のM君であった。聞けばこの4月に富山に転勤になったという。この日は北陸地方は低温予想だったため、わざわざ美濃まで来てしまったらしい。せっかく富山に赴任したんだったら採れても採れなくても富山のギフを徹底的にやればいいのにと他人は思うのだが、そこはそこ、やはり「採りたい年ごろ」ということらしい。
わざわざ富山から来てボロでは可愛そうなので、昨年見つけた東白川村のポイントへ誘う。東白川村は期待どおり時期もバッチリで鮮度の良いギフが迎えてくれた。それにしても、昨年見つけたポイントに私が張り付いている間、M君の姿が見えないので遠慮しているのではないかと心配していると、近くで伐採斜面のポイントを見つけてしっかりというかちゃっかりというか、見事2桁アップしていた。いやはや、若いもんには勝てませんわ。
[記録]4月12日(土) 同行者 雅恵
岐阜県加茂郡東白川村神土 ギフ 8♂1♀(内1♂1♀雅恵)
当地は2005年以来4年連続となる。前年同様、クヌギは蛾の食害が著しく、毛虫がベタベタにくっ付いていて気色悪い。そのことと関係があるかどうかは不明だが、前年同様クロミドリは非常に少なく、その他の普通種を含めて全体的に蝶影が薄かった。この時期、梢を叩くと他のゼフやら蛾やらトンボやらいろいろ飛び出して鬱陶しかったりするものだが、そういったものを含めて少ない印象。いつもなら下草のヒメジョオンに多いベニシジミさえ全く見られず。時期が早かったのだろうか? でも、クロミドリは♀が採れてしまった‥。
[記録]6月8日(日) 同行者 雅恵
愛知県豊田市(旧藤岡町)昭和の森 クロミドリシジミ 1♀
旧美杉村の某所でウラキンが採れるという確かな情報を得て出かけた。6月20日から25日ごろが適期と聞いたが、この翌週は土・日とも仕事の予定だったので、少し早いと思いつつ出かけた。実際、時期的にも早かったと思われるうえに山の上はガスっていて寒いくらいで、おまけに昼ごろには雨となり、しっぽを巻いて退散した。
[記録]6月15日(日) 同行者 雅恵
三重県津市美杉町(旧一志郡美杉村)某所 ウラキン null
前年、「AAA(トリプルエー)」と命名したメスアカ♀の異常型を雅恵が(←これを書き漏らすとうるさいので)採集した六呂山へ、2匹目のドジョウ狙いでのこのこやって来た。
山頂付近でオオミドリがテリを張っているが、ややスレ。ジョウザンが2♂とも完品なのと対照的である。メスアカは完品からボロまでマチマチで、♀を狙うにはよい時期と思われたが実際に狙って♀を採集することは結構難しい。叩きまわってやっと1♀を得たが、当然のように普通型であった。
[記録]6月28日(土) 同行者 雅恵
岐阜県加茂郡白川町六呂山(パール白川)
メスアカミドリ 5♂1♀(内1♂雅恵) ジョウザンミドリ 2♂ オオミドリ 2♂ ウスイロオナガ 1ex. ウラクロシジミ 1♂ スミナガシ 1♂