2013年採集記録(上)


 この記事は、よい子の蟲だより№235(2017年2月28日)に掲載されたものを、一部加筆修正してアップしたものです。


 昨年、突如目覚めて今さらながら岐阜県のギフチョウの市町村集めを始めたものの、昨シーズンはたった3市町村しか追加できなかった。そこで、今シーズンは開幕前から下見に出かけた結果、いつになくのめり込んで1シーズンのギフの出動日数としてはおそらく過去最多となった。


■ 2月17日(日) ギフの下見(1)

 下見第1弾は旧美山町辷石(すべりいし)。まだ山中には思いのほか雪が残っており、カンアオイを探しにくい。それでも半日かけて3か所でカンアオイを見つけ、最後に見つけた休耕田奥の自生地はまずまずの環境で、ギフを産すると期待するに十分と思う。次に旧美山町馬坂峠へ。峠の美山町側斜面にカンアオイがボチボチ生えていたが、午後は全く日が当たっていない。最後に少し時間が半端になったので、昨年カンアオイを見つけて大いに期待している旧本巣町外山へ。ここも午後は日が当たっていなかった。午前中の日あたりは良いと思われる。

 


■ 3月2日(土) ギフの下見(2)

 可児市で柿下ほか何か所かを下見。昨年、柿下一帯の土地を某企業が買い上げたと聞いたので、開発が進んでいるのではないかと心配していたが、一角に大型スーパー「バロー」の大規模物流センターができた以外は無事だった。昨年見つけた場所以外でもカンアオイを発見。カンアオイはかなりの量が自生している。

 次に御嵩町へ。みたけの森から丸山林道付近を探すがサッパリ。津橋へ移動し、東海自然歩道を津橋から瑞浪市境まで歩くがカンアオイは見つからなかった。

 


■ 3月3日(日) ギフの下見(3)

 旧郡上八幡町那比へ行ったもののまだ残雪がドッとあり、特に肝心の北側斜面はほとんど雪の下で下見にならず、車で流しただけで終わった。

 昨日、時間切れだった御嵩町へ移動。昨日とは別の場所を探して歩き回り3か所でカンアオイの自生を見出すも、どこも極めて貧弱な自生地でギフが発生しているという確証がない。結局、夕方近くまで探し回って見つけた4か所目の自生地が、ヒノキの植林ながらかなりの量のカンアオイがあり、これならきっとギフが発生しているだろうとやっと安心した。


■ 3月9日(土) ギフの下見(4)

 旧坂下町へ古い記録を頼りに下見に行く。坂下町はこれまで幾度となく敗退しているが、今回行った場所は今まで行った中では一番雰囲気は良かった。もっとも、尾根なので当然のようにカンアオイは見つからず、果たしてギフはいるのやらいないのやら。下りで道に迷い、ひどい目にあった。

 3月上旬というのに昼過ぎには山裾では暑いぐらいの陽気になり、車載の温度計は23℃を示す。この日は西日本から東日本にかけて気温が猛烈に上がり、各地で最高気温が25℃を超える夏日を記録したという。

 春来ずに 夏来たるらし いきなりの 

 夏日記録す 弥生初めに

 ここは南半球か! テングチョウ多数とルリタテハ1ex.を目撃。

 


■ 3月11日(月) ギフの下見(5)

 下呂市へ向かう途中の白川町下佐見でカンアオイの自生地を発見。結構よさそう。 下呂市門和佐では計4か所でカンアオイの自生を発見。ただ、鹿の食害がかなり目立っており、この先が心配される。

 

 ギフの下見なんて地味なことを、こんなに熱心に5日間もやることになろうとは自分でも思いもしなかった。何事も食わず嫌いは良くない。下見もやってみるとそれ自体意外に面白い。ギフと違ってカンアオイは、曇りや低温といった気象条件に左右されることもなく、季節の推移に頭を悩ませることもない。ましていわんや振り逃がして地団駄を踏むこともない。カンアオイは理詰めで探すとわりと期待通りに見つかってくれて、何だかもう採ったも同然とばかりにウッシッシとほくそ笑んでいい気分になれる。そんな私の様子を見て雅恵からは、「そんなに楽しいんなら、このまま下見だけで終わらせて、ギフなんて採りに行かない方がいいんじゃない?」とまで言われる始末…。

 


■ 3月20日(水)‐24日(日) クチン周辺(東マレーシア・サラワク州)

 突然ですが、ここでマレーシア遠征のためギフはしばし中断 ― 何とギフチョウ本番直前のこのタイミングで、マレーシア行の予定を入れてしまっていた。完全にギフモードになっていたので正直煩わしいくらいだったが、いわばギフの下見が自主トレで、マレーシア遠征はシーズン開幕前の海外キャンプといったところ?

 今回の行き先は前年8月に行ったのと同じボルネオのサラワク州クチン。前回は、乾季のはずが現地滞在3日間のうち1日半を雨にたたられ不完全燃焼に終わったため、今回リベンジを期しての再訪となった。今度こそは滞在3日間とも晴れたものの、直前まで雨が続いていたらしく、蝶の発生数そのものは少なかった。

[記録]3月21日(木)‐ 23日(土) 同行者 雅恵

東マレーシア・サラワク州 クチン周辺

ウルティマヒメイナズマ5ex.(内1ex.雅恵採集)、クラトラータヒメイナズマ2♂、バンカナオオイナズマ1♂、カネスケンスオオイナズマ3ex.(雅恵採集)、ヤイロタテハ1♂、アドノラミナミイチモンジ2ex. キナバルトラフシジミタテハ1♂ 、キネシアフシギノモリノオナガシジミ4♂(内2♂雅恵採集) 等々、3日間で128頭採集。

 


■ 3月30日(土) 旧本巣町ほかのギフ

 いよいよ待ちに待った国内シーズンの開幕。3月に入って異常高温が続き、おまけに余計なマレーシア行を入れてしまったために、渡航中にギフが全部出てしまうのではないかと気が気でなかった。帰路、関西国際空港から名古屋への道すがら、電車の窓から見える桜の開花状況を食い入るように観察し、留守中の5日間で心配したほど季節が進んでいない様子にほっと安堵の胸をなでおろした。

 さて、毎年ギフをやっていても、シーズン開幕の初日はどうしてもフライングの不安という呪縛から逃れられない。この日は昨年来の宿題になっていた旧本巣町へ直行したい気持ちをぐっと抑え、まずは旧美山町馬坂峠へやってきた。ここの方が本巣よりも発生が早そうなうえ、もし採れなかったら、前年13♂採集している武芸川町宇多院が目と鼻の先なので発生状況を確認しに行ける。そんな中途半端な気持ちで馬坂峠へ来てはみたが、カンアオイの自生する斜面は朝9時過ぎの時点で全く日が当っておらず、ギフの気配なし。

 即、武芸川町宇多院へ移動。昨年見つけた栗畑のポイントへ直行すると、何と先客がいた。まだ観ていないという。近くにもう一人採集者がいて、この人も栗畑へ行ったが先客がいたので遠慮した由で、まだ観ていないという。栗畑ポイントは少し奥まっていて見つけにくいと勝手に思っていたが、何のことはない、例によって「自力で見つけた有名ポイント」だったことが判明。こんな場所でウロウロしていても時間のムダと知り、腹をくくって一番行きたい場所へ行くことにする。

 

 旧本巣町外山。昨年、2日がかりで散々探し回ってやっと見つけたカンアオイの自生地である。ギフが発生しているとすれば絶好というよりむしろ平凡な環境だが、もしここでいなければ本巣はもういないような気がしていた。

 来てみると、予想したこととはいえさっきまでいた場所より少し春が浅い。フライングか? 周囲に慎重に目をやりながら林道を進む。歩き始めて間もなく、何気なく振り返った後方10mほどの地面にギフが止まった。まるで私の後ろをつけてきて、私が振り返ったために慌てて地面に伏せたかのように。やっぱりここにいたか。きっといると信じてはみても、実際に姿を見るまで安心できなかった。慎重に近づき、ネット。ピカピカの♂だった。1年越しの宿題が片付き、肩の荷が降りたようにホッとした。

 この後、広くもないポイントで1時間も粘ってしまったが2頭目はいっこうに現れない。少し粘りすぎた、転戦しよう。奥まで詰めた林道を引き返し、少し足早になったその時だった。たった5分前に通った時にはいなかったのに、不意に足元から飛び立ったギフに慌てて振ったネットは空を切った。林道に沿って逃げるギフを追って追って追って、最後はブッシュに邪魔され僅かに及ばず。転戦しようと思って、一瞬集中を切らした刹那の出来事だった。

 

 今シーズンは開幕前にたくさんギフの下見をした。下見をすると逆に良くないことがひとつだけある。人情として、下見した場所へどうしても行きたくなって判断が狂うのだ。初めはフライングを心配していた本巣の林道で2頭目が現れたことで、旧美山町辷石へ行きたい気持ちを抑えられなくなっていた。辷石は時期的に早いと思ってこの日の予定に入れていなかったのに、もしかしたらそろそろ出ているのではないかと自分に都合良く考えて、予定外の辷石へ転戦してしまったのだ。

 結果は、ぶざまなまでのフライング。現地に着いた瞬間、後悔していた。集落周辺の桜はまだチラっとも咲いておらず、丸1週間早い風景だった。

 この失敗でもう行く先がなくなり、朝一番で行った馬坂峠へ再び行くことになる。午後1時、馬坂峠着。相変わらず全く日が当たっていない。要するに斜面が真北を向いているため、太陽が低いこの季節、午前も午後も全く日が当たらないということのようだ。どうも釈然としないが、とにかくこの日1日で同じ場所で2度コケた。

 最後に、翌日に備えて旧美山町内で他の場所を探して回るが、目ぼしい場所は見つからなかった。富永の「みやまの森」に「ギフチョウは見て楽しむ」の古い看板があった。「タラの芽等の山菜の販売目的での採取(業者)禁止」の記述もあり、かつてはギフも山菜も豊富に産した様子が伺える。今は公園としてすっかり整備され、スギの植林で林床は暗くなり、ギフも山菜も期待薄と思われた。看板を設置した人はこのような現状をどのように考えているのだろうか。

[記録]3月30日(土) 同行者 なし

岐阜県山県市(旧美山町)馬坂峠 ギフnull

岐阜県本巣市外山 ギフ1♂ 新鮮

岐阜県山県市(旧美山町)辷石 ギフnull(時期尚早)

 


■ 3月31日(日) 旧久瀬村のギフ(下見)

 曇りの予報だったので迷わず出かけたが、途中パラつき始めた雨は岐阜市内で本降りとなった。喫茶店で時間をつぶしていても天気は回復してこないので、とりあえず、昨日1♂しか採れなかった本巣の林道入口に車を停めて雨があがるのを待つことにする。

 ふと気付くと、いつの間にか車のシートで爆睡していたらしく、外の様子は変わっていないのに時計だけが正午を指していて驚いた。1時間半も眠ったらしい。雨は相変わらず降り続いている。それにしても、冷たい雨がそぼ降る中、人気(ひとけ)のない山中に他県ナンバーの不審な車が長時間停まっていて、男女が運転席と助手席で眠っていて起きてくる様子がない…ってことは、誰が見たって練炭自殺! パトカーが来なくてよかったよ。

 さて、午後1時頃に雨があがったので、旧久瀬村樒平に来てみた。せっかく来たので高圧鉄塔のある尾根へ登ってみると、カタクリが細々と花を付けカンアオイは早くも新葉が出ていた。鹿の鳴き声を近くで二度、三度聞く。低温で風が強い中をルリシジミ2頭目撃。集落の桜はチラホラ咲き。

[記録]3月31日(日) 同行者 雅恵

岐阜県揖斐郡揖斐川町(旧久瀬村)樒平 ギフnull(雨と低温で下見)

 


■ 4月8日(月) 郡上市八幡町ほかのギフ

 まだシーズン開幕実質2日目というのに、早くもこの日、今シーズンのクライマックスを迎えようとしていた。4日(木)・5日(金)の両日が好天で思いっきり気温も上がり、美濃ギフは各地で一斉に出ているはずだ。6日(土)は雨、7日(日)は仕事で、振休のこの日がラストチャンス。この日を逃せば美濃ギフは来シーズンまで拝めない。一年で一番大事な日と言っても過言でない。

 そこで、雨の土曜日に慎重にプランを練った。練り上げたプランがこれだ。

(1)郡上市

 

(2)郡上市

 

(3)山県市

  (4)可児郡

旧大和町大間見

旧郡上八幡町那比

 → 

 旧美山町辷石 

 御嵩町津橋 
(移動時間) 25分    45分    60分   
(移動距離) 20km   31km   55km  

※(3)→(4)は東海環状自動車道を利用。他は下道。

 本当はこういう採集の仕方はしたくないが、まだ採っていない市町村のうち確実に採れそうな場所を最大限効率よく回るとするとこうなった。このうち(3)と(4)は下見十分で自信あり、(2)は3月3日の時点でまだ残雪がドッとあり満足な下見はできていないが、当たりはついている。唯一(1)だけ下見していないが、ピンポイントで場所は分かっている。(2)→(3) は、国道256号を新しくできたタラガトンネルを抜け洞戸経由で45分程度で移動できそう。こうしてみると、天気さえ良ければ1日4市町村も夢ではないような気がしてきた。

 ところがである。週間予報ではこの日は晴れることになっていたのに、近づくにつれ予報が怪しくなってきた。寒気が入りそうなのだ。前日の夜、もう一度予報を確認すると、飛騨山間部は朝方まで雪の予報。美濃地方は各地とも晴れで最高気温は18℃の予想ながら、朝の冷え込みに続いて午前中の気温が低い予想で、北へ行くほどこの傾向が顕著だった(下表)。

●4月8日の各地の1時間ごとの予想気温

  最低   10時 11時 12時   15時
郡上市(1)(2) 3℃  → 

10℃

12℃ 14℃  →  18℃
山県市(3) 4℃ 10℃ 13℃ 15℃  →  18℃

恵那市(4)

4℃ 10℃ 14℃ 16℃  →  18℃

もしこのとおりならどこも厳しいが、特に郡上方面はかなり厳しい。行く順番を逆にして(4)→(3)→(2)→(1)という案も考えたが、元々(4)はおまけで時間があれば行こうという程度だったので気が進まなかった。迷った挙句、未練たらしく初めに(2)へ行くことにした。予報が良いほうに外れて気温が高ければ(2)→(1)と回り、予報通りの低温ならすぐさま転戦して(3)→(4)と行き、いずれにしてもこの日は高望みせずに2市町を確実に落とす作戦に変更した。

《 旧郡上八幡町那比 》

 ところがなんということか、当日の朝、郡上八幡で国道256号に入って間もなく交通整理のおじさんに車を停められ、何事かと思うと、この先通行止めだからここでUターンしろと言う。そんな無茶言っちゃいけない。見たところ道は通れそうだし、この先まだ集落はあり地元民は通しているのだろう。どこまでなら行けるのかと尋ねたら、高畑温泉の先のトンネル手前で工事をしていると言う。なんだ、脅かすなよ。それなら那比のポイントまでは問題なく行けるじゃないか。行かしてもらうよ。ということで車を進める。しかし、待てよ。ということは、いま自分は袋小路に向かって車を走らせているわけで、大和町へは転戦できても美山町への転戦は利かないということだ。この時点で車載温度計を見ると6℃。これはハマった。どうしよ う。

 と、泣きそうになったところで道端に右の看板を見つけた。なんだ、単なる時間通行止めじゃないか。要するに10時から10時半までの間なら通れるってことだ。それを早く言えってんだ。しかし、よく見ると工事期間は4月8日から…ってことは、今日からじゃないか。4か月近くも工事するっていうのに、何もよりによって今日からやらなくったっていいだろう。

 そんなこんなで、那比のポイント着が8時50分。周辺の桜は満開ないし散り初め。斜面にカンアオイがあっていい感じだが、この時間は全く日が当たっていない。気温は依然として6℃。6℃だよ6℃。あり得ないでしょ。3月3日に下見で来て、雪がドッとあった時より寒いっていったいどういうことだ。

 なんにしても10時過ぎまでが勝負で、そこで脱出できないと12時まで缶詰である。時間がないので焦って時計と温度計を代わる代わる見るが6℃のままで上がる気配がない。9時半頃、もしやと思って足瀬の伐採斜面へ移動してみる。ここは北向き斜面ながら全体的に日当たりが良いのではと見込んで来てみたら、予想通り周辺に日がよく当たって暖かそうに見えた…が、予想に反して気温は6℃のまま同じだった。この温度計壊れてんじゃないのか。それとも寒すぎてかたまってるのか?

 それでも伐採斜面を登ろうと近づいてみると、伐採斜面でなくて果樹園になっており「関係者以外立入禁止」の札が下がっていた。なんてこった。下見の時には車で流しただけだったので気付かなかった。今日はまるで仏滅とさんりんぼうと天中殺が一緒に来たみたいな日だ。

 が、あきらめて車に戻ったその時だった。はるか前方で道を横切るギフらしき影が! まさか。目の錯覚だよ。寒すぎて幻覚を見たんだ。半信半疑で駆け寄ってみると、慌てふためいたようにギフが近くの杉の梢に舞い上がり、そのまま姿を消してしまった。見ると杉の梢には日がよく当たっている。想像するに、「日差しに誘われたギフが杉の梢から降りて地表で羽を広げてはみたものの、あまりの寒さにほうほうの体で元のねぐらに戻るの図」であったと思う。日当たりさえ良ければ、時として気温6℃でもギフが飛ぶ。― 私にとって奇跡の新発見だった。

《 旧美山町辷石 》

 予定通り?10時に郡上八幡を見切って脱出し、11時前に旧美山町辷石に到着。気温11℃。カンアオイが自生する小さな谷の奥でしばらく粘るが、飛びそうにない。11時半頃、弁当を取りに車へ戻ったその時だった。20mほど離れた舗道上に、道路脇の杉からギフが降りるのを確かに見た。駆け寄ると、畑の真ん中の枯れ草上で日光浴している。畑の中に入っていくわけにもいかず、飛び立ってブルーネット目がけてこちらへやって来るのをじっと待つ。待つこと5分。やっと飛んだと思ったら、向こうへ向こうへと行ってしまい、あっという間に舞い上がって畑の向こうの杉の梢上へと消えた。

 郡上八幡と全く同じ行動パターン。こんな低温の日は、発生地の林内よりオープンランドのほうがよいと判断して路上を少しうろつくが民家が近くてやりにくい。未練たらしく12時半まで粘ってしまったが、結局2匹目のドジョウは現れず。12時半の時点でも相変わらず気温11℃のままだった。

《 御嵩町津橋 》

 本日の3か所目、御嵩町津橋に午後1時半に到着。快晴で気温15℃。これまでずっと寒かったため、いやに暖かく感じる。今日1日で4市町村落とそうなんて欲張りな計画を立てたりしていたが、それどころかこのままではnullだよ。早速、目星をつけてあったヒノキ林へ潜り込むと、心配が的中してしまった。林床に全く日が当たっていないのだ。

 躊躇なく次のポイントへ。下見が十分なので行動が早い。今度は明るい雑木林の中の林道を歩いていくと、暖かくていい感じ。今にもギフが飛び出してきそうだ。しかし、出てきてくれない。ならばこちらから入っていく。ブッシュをかき分けてカンアオイの自生する谷間へと踏み込むと、猫の額ほどの自生地だが狙い通り新鮮な♀が飛んだ。その後、新鮮な♂も林道に出てきて、やっとの思いで1ペア採集できた。この後、勢いを得てというか未練たらしくというか、御嵩町津橋で計3か所のポイントで4時過ぎまで粘ったが追加はなかった。帰る時点で快晴で気温15℃。これが午前中だったら今日はいい一日になっただろうに。でも、nullでなくって本当によかった。

[記録]4月8日(月) 同行者 なし

岐阜県郡上市八幡町那比 ギフnull(低温)

岐阜県郡上市八幡町那比足瀬 ギフ1ex.目撃(低温のなか奇跡的に飛ぶ)

岐阜県山県市(旧美山町)辷石 ギフ1ex.目撃(低温)

岐阜県可児郡御嵩町津橋 ギフ1♂1♀ 新鮮(午後から)

 


■ 4月13日(土) 下呂市ほかのギフ(パート1)

 今年の美濃各地はかなり発生が早かったので、もうどこも行くところがない。和佐の苗代桜が8日(月)に満開になってしまった時点で、週末は下呂でさえもう遅いだろうと半ばあきらめていた。ところがどっこい、その後寒波が入り込んで10日(水)から12日(金)まで下呂方面は激寒だったので、この日でギリギリ間に合ったという判断で下呂へやってきた。

 下呂は下見の際に門和佐で4か所カンアオイの自生を確認している。もっともそのうち2か所はショボショボなので、本命は中村と芋沢上の2か所だけだ。そこで、まずは中村へ。道端のなんでもないところにカンアオイが結構ある。10時20分に着いて1時間ほど待ったが、気温は着いたとき8℃だったのが9℃に上がっただけで今日も寒い。これではどうしようもないので、とりあえず芋沢上に移動しようと思い、途中の田舎道のマイクロバスとのすれ違いで、何と、左前輪を深いU字溝に脱輪してしまった。いくら四駆でも落とし方が悪くてすぐには脱出できない。田舎の人は親切で、マイクロバスから大勢降りてきてタイヤの下に大きな石をかましてくれて脱出できた。私の不注意で大変ご迷惑をおかけしてしまった。

 この騒ぎで30分近くロスって11時45分ごろ芋沢上に着く。路肩の安全な場所に車を停め、道路を横断しようとしていた。脱輪事故直後だったので、いつになく慎重に安全を確かめた。田舎道を飛ばしてくる車もあるので左右をよく確かめて、小走りに道を渡った。しかし、まさか正面から来るとは思いもよらなかった。道の中ほどで、正面から来たギフとバッティングしたのだ。私も驚いたがギフの方も驚いて、狂ったように杉の梢へと舞い上がってしまった。今日のような低温時には、そこら辺の道端が要注意だってことを先週から繰り返し経験しているのに、学習しないヤツとは私のこと。

 この時点で気温10℃で、寒いから車で待っていると言っていた雅恵も私の様子を見て支度をしている。二人でポイントに向かう。手前の明るい林に雅恵を残し、私はひとりで奥へ行く。明るい林内は多少気温が上がって11℃。日当たりの良い斜面ではもう少し気温が高く感じられ、かろうじて私が2♂採集、1頭振り逃がしで戻ってくると、雅恵もしっかり2♂採集していた。

[記録]4月13日(土) 同行者 雅恵

岐阜県下呂市門和佐芋沢上 ギフ4♂ 新鮮(内2♂雅恵採集。低温)

岐阜県下呂市門和佐中村ほか ギフnull(低温)

岐阜県加茂郡白川町下佐見 ギフnull(午後から。低温)

 


■ 4月14日(日) 下呂市ほかのギフ(パート2)

 この日は旧坂下町へ行くつもりだったが、どうにも気温が上がりそうにない。坂下で下見した場所は尾根のため、低温では勝負にならないと判断して2日続けて同じ場所へ来てしまった。昨日よりは気温が上がりそうなので、今日はもっと数が出ると期待していた。

 午前10時に芋沢上。気温13℃で昨日と比べれば風に寒さを感じないが、逆に薄雲がかかって日当たりの良い斜面でもあまり暖かさを感じない。昨日と同様、手前で雅恵を待たせて私だけ奥へ行き、1♂採って戻ってくると雅恵は1♀採っていた。♀が採れてしまったということは、こんなに少ないけれど盛期と考えざるを得ない。

 下見の時から気になっていたが、地面にはおびただしい数の鹿の糞があり、この日も近くで鹿の鳴き声を聞いた。幸か不幸か、クマザサがはびこっているためカンアオイはクマザサの根元に潜むようにしてかろうじて食害を免れているように見受けられた。

 結局、一番有望と思っていた中村ではこの日もギフは観られず。帰路、昨日に続いて立ち寄った白川町下佐見で、かろうじて雅恵が1♂採集した。下呂はすべて完品だったのに対して白川町の個体は少し傷んでおり、目と鼻の先ながら実は白川町は時期を逸していたかもしれない。

[記録]4月14日(日) 同行者 雅恵

岐阜県下呂市門和佐芋沢上 ギフ1♂1♀ 新鮮(内1♀雅恵採集)

岐阜県下呂市門和佐中村 ギフnull

岐阜県加茂郡白川町下佐見 ギフ1♂ スレ(雅恵採集)

 


■ 4月19日(金) 揖斐川町(旧根尾村)のギフ

 旧谷汲村と根尾村の境にある乗越峠へ行く。昨年5月に下見がしてあって、尾根沿いにカンアオイがあるのを確認している。この日は、ここ数日やっと気温が上がったと思ったのもつかの間、再び寒気が入り込んで、揖斐川町で最高気温が前日の26.1℃からこの日は16.0℃まで下がった。乗越峠は標高750mほどで、季節的にはこの日でバッチリと感じた。しかし、尾根道が南東側つまり旧谷汲村側を登っているうちは日あたりがよくて風は全く当たらず、気温が低いといっても登っていると汗ばむほどなのに、一歩、旧根尾村側である北西側に出た途端、日は当たらないうえに強風が吹きつけていて凍える寒さだった。体感気温の差は20度近くあったのではなかろうか。

 この日の予報で寒波が入ることは分かり切っていたが、晴れれば何とかなるの一念で出かけた。今シーズンから市町村集めを本気で始めたことで、天気予報が少々悪くても出かけることにためらいがなくなった。1頭採れば1市町村落とせるわけだから、1頭だけなら行けば何とかなるかもしれない。もっともこの日は、「やっぱ、行かな採れまへんわ。ハッハッハッ」と、高笑いするつもりで出かけてはみたものの、「やっぱ、行っても採れまへんわ。ヘッヘッヘッ」と、自嘲気味に笑うしかなかった。

[記録]4月19日(金) 同行者 雅恵

岐阜県揖斐郡揖斐川町(旧根尾村) 乗越峠 ギフnull(低温・強風)