■ グリーン島1泊ツアー -4・5日目-

ケアンズ到着3日目の朝、ホテルの部屋はそのままに、身の回り品だけ持ってグリーン島に渡る。グレートバリアリーフに浮かぶ数々のリゾート島の中でも、宿泊施設があるコーラルケイ(珊瑚でできた島)はグリーン島とヘロン島、それに最南端のレディエリオット島を含めて3か所しかない。

ところで、私がコーラルケイにこだわるには二つ訳がある。

ひとつは、コーラルケイの多くは周囲をラグーンと呼ばれる珊瑚礁の浅瀬で囲まれている。だからシュノーケリングしかしない(ダイビングをできない)私たちにとって好都合なのだ。

もうひとつが重要である。ケアンズは熱帯雨林気候に属し、海に背を向ければそこには世界最古と言われ世界遺産にも指定されている広大な熱帯雨林(ジャングル)が広がっている。言わずもがなの生物多様性の宝庫、すなわち蝶の宝庫だ。グレートバリアリーフの島々も多くはかつて氷河期には豊かな自然を育むオーストラリア大陸と陸続きだったと思われる。一方、コーラルケイは珊瑚の堆積物からできたちっぽけな島なので、陸上の生物相は単調で貧弱に決まっている。そこらへんのいい加減なガイドブックは、何でもかんでも「島は鬱蒼とした熱帯雨林に覆われ…」とか平気で書いているが、ウソ八百。コーラルケイに熱帯雨林などあるはずもなく、あるのはただ熱帯性植物のブッシュ(藪)だ。公園の芝生やゴルフ場のグリーンを「草原」と呼ぶが如し。

くどくど書いたが何が言いたいかというと、コーラルケイなら海には豊かな自然があるが陸上にはそれがない。つまりろくな蝶がいない。ここがポイントなのだ。今回は結婚25周年記念の家族サービスが目的なので、私が蝶にうつつをぬかすことなく二人が楽しめる場所を選ぶ必要があった。

ヘロン島行きが夢となったあの電話で、真っ先に上記のレディエリオット島のことを尋ねた。残念ながら宿泊は満員で取れないとの返事。とっさにケアンズ行きを決めた後で、そんな訳から最後の選択肢としてグリーン島1泊宿泊ツアーを申し込んでいた。

グリーン島概念図
グリーン島概念図(グリーン アイランド リゾートのパンフより)

 

グリーン島は1周約30分の小さなコーラルケイで、島の大きさもヘロン島と瓜二つと言える。ただ決定的に違うのは、グリーン島はケアンズから近いため大量の日帰り客を受け入れていることで、昼間は大勢の観光客で賑わう。

また、本来の自然を楽しむには不必要な余計な施設がガチャガチャあるのも気に入らない。

ただ、良い点としては、リゾートの部屋数が46室しかないので、夕方最後の船が出た後は人影もまばらで静かになる。

高速カタマランの写真
高速カタマラン

この船で島へ渡った。正確には分からないが優に300人以上乗っていたように思う。こんな感じの船が毎日3隻ほど島に着く。

 

正面から見たカタマランの写真
正面から見たカタマラン

正面から見るとカタマラン(双胴船)であることが分かる。それにしても、今日も申し分のない天気だ。

 

桟橋から見たグリーン島の写真
桟橋から望むグリーン島

海が大変美しい。桟橋の上からでも珊瑚の間を泳ぐ色とりどりの魚の姿が見える。

 

グラスボトムボートの写真
グラスボトムボート

こちらは船底がガラス張りになっているグラスボトムボート。屋形船のような形をしている。両側にベンチが付いていて、客は前かがみになって足下の船底を覗き込む。

 

林内のボードウォークの写真
林内のボードウォーク

島に上陸後チェックインまでに時間があるので、まずは島内探索に出かける。林内のボードウォークを歩くと今にも色々な蝶が飛び出してきそうな雰囲気だが、期待どおり(?)蝶相は極めて貧弱で、都会の真ん中のありふれた公園並みといったところ。2日間で複数回見かけたのはシロオビアゲハに似た感じの小型のアゲハ Papilio sp.と中型のルリマダラ Euploea sp.のみ。他はマメ科の木本にまとわりつく小型のシジミチョウと茶褐色の地味なセセリチョウを各1頭、それに、どこから紛れ込んだのか極めて飛翔力の弱いMycalesis属と思われるジャノメチョウを1頭見ただけだった。

 

クイナの一種の写真
島内のいたるところで見かけるクイナの一種

島内のいたるところでクイナを見かける。林内はもちろん、宿泊施設や食堂で人の足元で食べこぼしをついばんでいたり、果ては太陽が燦々と降り注ぐビーチで、人が置いた荷物のビニール袋をつついて中の食べ物をあさる姿もあった。元々コーラルケイは生物多様性に乏しく生態系が脆弱なため、人間がリゾート施設をつくって大量に押しかけたことでクイナの異常発生を引き起こしたと考えられる。要するに、クイナにとって天敵らしい天敵のいないこの島で、人間の持ち込む餌によって爆発的に増えた。さながら都会のハトやカラスといったところ。それにしても、ろくに飛べないこの鳥がどうやって島に入り込んだかは不明である。

 

高級リゾートの室内の写真
高級リゾートの室内

二度と泊まることのないであろうグリーン島の高級リゾートホテル。「地球の歩き方」で、特集「憧れのアコモデーション」の中でも紹介されている。ケアンズからの往復のフェリー代を含めて2人でA$411(約42,000円)は、それだけでも十分高いが、実は食事代が含まれていない。朝食のバイキングが1人約3,500円とバカ高く、着いた日の昼食と夕食、翌日の朝食代を含めると結局6万円を超えた。

 

ウミガメの写真
夕暮れの海を泳ぐウミガメ

サンセットを見に桟橋へ行ってみると、夕暮れの海を大きなウミガメが悠然と泳いでいた。上手く撮れなかったけれど、雰囲気だけでもと思い載せておく。

 

ウミガメとは、前日のノーマンビー島とこの日のグリーン島のシュノーケリングで合わせて2回一緒に泳ぐことができた。ウミガメの泳ぎは意外と速くないので、シュノーケリングでも十分追いつける。たいていは海の底のほうを泳いでいるのでダイブしないと上から眺めるだけになるが、その時は運良く海面へ浮上してきてくれたので、雅恵と代わる代わる甲羅を触ったり、甲羅の端っこにそっとつかまってみたりしながら横を一緒に泳いだ。真横を泳ぐ私の方に向かってひょいと首をかしげて、大きな瞳で私の方を見た。一瞬目が合って、「竜宮城へ連れていってあげる」と言ったような気がしたが、どんどん沖へ行ってしまうのですぐにあきらめた。(本当は、私の方を睨みつけて「何すんだよ、このバカ」とか言いながら一生懸命逃げていただけ、だったりして…。)

 

エイの写真
大きなエイ

今度は大きなエイも現れた。直径70-80cmくらいか。

 

サンセットの写真
グリーン島のサンセット

残念ながら海ではなくて陸のサンセットだった。ということは、反対側は海なので水平線からのサンライズが期待できる。子どものころに観た海のサンライズは、サンセットとはまるで趣が違い七色に輝くような幻想的な美しさだった記憶がある。明日の朝は早起きしてサンライズを見に行こうかという話になりかけたが、日の出は5時46分。島の反対側のビーチまで行くことを考えると、5時には起きなければならない。結局、夜9時からのナイトウォークツアーに参加し、その後でビーチで満天の星を眺めていたら寝るのが遅くなってしまってあきらめた。

 

メインビーチをバックにしての写真
静かなメインビーチをバックに

10時頃に最初の船が着くまでの島内は人影もまばらで静か。誰もいないメインビーチで、朝っぱらからシュノーケリングを楽しもうというところ。

 

メインビーチをバックにしての写真
お、お前、さてはケムール人だな!

誰だ、シャッターを切ったヤツは! 被写体はいいんだから(?)、ちゃんと上手に撮ってよ。ちなみに「ケムール人」がお分かりにならない方は、次に動画があります。

 走るケムール人(外部リンク)

 

ビーチでくつろぐ写真
ビーチでリラックスごっこ

ヘロン島では来る日も来る日もシュノーケリング三昧をして、疲れたらビーチでのんびりと、こういうことがしたかった。グリーン島の2日目、ポンツーン行きの船が出るまでの間、つかの間のまねごと。

と、ビーチのどこからか「あと5分だから、それまで泳いでいていいよ」という日本人ファミリーの声。これだからグリーン島は嫌だったんだ。

 

ポンツーンでの写真
ポンツーンにて。楽しかったが、少々お疲れ

11時30分グリーン島発のカタマランで、アウターリーフのポンツーンに向かう。グリーン島で1日ゆっくりすることもできたが、せっかくケアンズへ来たからにはアウターリーフへ行きたい思いが強く、たまたまツアーに空きが出たため申し込んでしまった。

 

ポンツーンでは昼食以外は時間を惜しんでシュノーケリング。十分満足したが、ゆっくりするどころかハードスケジュールで、さすがに疲れた。 

ちなみに身長180cmの私でも、ライフベストのサイズはM。オージーはデカイよ。

空からのポンツーンの写真
ポンツーン(グレートアドベンチャーズのサイトから転載)

 

なお、ポンツーンとは浮き桟橋とも言われる海上デッキのこと。リーフエッジに設置されていて、これに写真のようにカタマランが横付けする。