2021年採集日記(中)


■ 4月24日(土) 飛騨数河高原周辺のギフ(パート1)

 今回の目的は、何年か前にポイントを見つけたまま十分な調査ができずに放置してある数河(すごう)高原の探索だった。知っているポイントは2か所あり、他にも気になっている場所がいくつかある。

 平年だと5月の連休ごろが適期と思われ、それより10日も早いこの日に行くはのそれなりに勇気がいる。「さすがにまだ早いかも」と思う一方で、「いやいや下手すりゃ今年はもうボロだぜ」とか、行く前にはそれぐらい思考が迷走する。何しろ経験がないほどの記録的高温と思いきや4月に入って気温の乱高下が激しく、二重の意味で季節がつかめない。こういう時は迷っていてもはじまらないので、行くしかないのだ。

 ところがどうだ。実際に行ってみると、ますます訳が分からなくなった。何と、季節を知るために重要な指標であるはずのサクラがろくに花を付けていない。未開花ではない。ウソ(野鳥)の群れが蕾を食いつくしていったらしく、蕾が付いていないのだ。近付いてよく見ると満開に近いようにも見える。なのに遠目にはウメのように見える。かくして三重に季節がつかめなくなった。ウッソー! 泣けてくる。 

数河ドライブイン向いのサクラ。満開近し?
数河ドライブイン向いのサクラ。満開近し?

《神岡町西》

 こんな時は良く知っているポイントでまずは発生状況を確かめるに限る。という訳で、もう十分採ったはずの神岡町西のポイントへ来てしまった。 

 ところがところが、サイシンはこんなに芽吹いていて天気も良くて気温も上がり、なのにギフは全く飛んでいない。1つ2つ採れれば鮮度を確認できるが、ただの1つも姿を見せない。そして、なぜかスギタニルリシジミだけが掃いて捨てるほどいた。

サイシンの芽吹き。
サイシンの芽吹き。
スギタニルリシジミの交尾。
スギタニルリシジミの交尾。

《神岡町伏方》

伏方のピークポイント。
伏方のピークポイント。

 サイシンの状態からは未発生とは考えにくいが、草木の芽吹きや全体の印象としては微妙に春が浅いようにも感じる。そこで、さらにもう少し標高を下げて伏方のピークポイントにやって来た。

 ここでようやく2♂を採集したが、1♂は結構なボロでもう1♂は新鮮。うーん、分からん! 現地に来ているのに季節が分からない。実際に採集したのにまだよく分からない。こんなことも大概珍しいが、今シーズンは先日の中津川もこれに似た状況だった。 

《数河高原》

 分からん、分からん、と悩んでいてもどうせ分からないのなら、最初から目的地の数河高原へ行けばいい。という訳でようやく数河高原へやって来た。

 最初に数河峠付近のポイントに立ち寄ると、予想どおりサイシンがほとんど芽吹いていない。わずかに標高が高い分だけ発生が遅いのだ。ここは未発生ということでほぼ間違いない。やれやれ少しだけスッキリした。こんなスッキリはちっとも嬉しくないけど…。

 次に数河高原のメインポイントへ。ここではヤマザクラがウソの被害を免れて咲いていた。しかしまだ2-3分咲き程度。この分だとギフは未発生かと思いきや、サイシンは日当たりの良い場所ではボチボチ芽吹いている。これならちょうど適期かもしれない。と一喜一憂しながら探したが、結局ギフは全く飛ばず。ここでもやたらスギタニルリが多かった。 

ヤマザクラは2-3分咲き。
ヤマザクラは2-3分咲き。
日当たりの良い場所ではサイシンが芽吹いていた。
日当たりの良い場所ではサイシンが芽吹いていた。

[記録]4月24日(土) 同行者 なし

岐阜県飛騨市神岡町西 ギフ null

岐阜県飛騨市神岡町伏方 ギフ 2♂(内1♂ボロ)

岐阜県飛騨市古川町数河高原 ギフ null

 


■ 4月25日(日) 飛騨数河高原周辺のギフ(パート2)

《神岡町伏方》

 前日の結果にどうも釈然としない私は、一晩考えた挙句に伏方の発生地ポイントへやって来た。昨日のピークで採集した2♂はボロと新鮮の両極端。いったいどっちが正しいんだ?!(←どっちも正しいんだって)という訳で、着いてみると木々の芽吹きはいい感じだがサイシンは新葉がかなり伸びて大きな株になっている。この様子からはギフは盛期から末期でもおかしくない。朝のうちは日照がなく寒かったので他へ探しに行き、天気が回復した11時ごろから早めの昼食をとりながらしばらく粘ったが全く飛ばず。

伏方の発生地。
伏方の発生地。
サイシンは新葉を伸ばして大きな株に。
サイシンは新葉を伸ばして大きな株に。

《神岡町山田》

 目の前の状況をどうしても呑み込めない私は、またまた別のポイントの様子を見に来てしまった。山田のピークポイントである。ところが、移動中は晴れていたのに正午頃にポイントに着いた時にはちょうど曇ってしまった。これではピークに上がってくるはずもなく、発生地は下なのでサイシンの状態も分からない。いったい何をやってんだか…。 

《数河高原》

 今回は2日かけて数河高原を調べるはずだったのに、目の前の現実に翻弄され、この日、数河高原にやって来たのは完全に午後になっていた。この頃には冷たい風が吹き始め、日差しのわりに気温は上がらず。ギフは当然のごとく飛ばず。 

[記録]4月25日(日) 同行者 なし

岐阜県飛騨市神岡町伏方 ギフ null

岐阜県飛騨市神岡町山田 ギフ null

岐阜県飛騨市古川町数河高原 ギフ null

 


■ 5月3日(月祝) 飛騨数河高原周辺のギフ(パート3)

《数河高原》

 前回は十分腹がくくれていなかったと深く反省し、今度こそは数河高原と心中するつもりでやって来た(←そんな大袈裟なもんじゃないよ)。

 9時40分、現地着。気温7℃。朝の冷え込みはやや厳しかったが、10時30分ごろには穏やかに晴れて無風。気温はまだ低目だったかもしれないが、体感気温的には18℃くらいに感じた。いたらきっと飛ぶと期待したが、飛ばず。

 前回から8日も経っているが、予想したとおり季節はそれほど進んではいないように感じた。木々の芽吹きはギフの発生初期~適期のそれ。サイシンの状態はギフの適期~盛期のそれ。ヤマザクラは散りはて。スギタニルリシジミが著しく数を増し、地這シジミみたく道ばたを群れ飛んでいた。

数河高原のポイントの様子。
数河高原のポイントの様子。
サイシンの状態。
サイシンの状態。

 次に、数河峠付近のポイントへ。

 途中、数河ドライブイン向いの神社のサクラを車を停めてしげしげと観察。ウソの食害で蕾が少ししか付いていないのでよく分からないが、まだ満開のように見えなくもない。だとすると摩訶不思議。このところ低温だったとはいえ、8日前と大して状態が変わっていないような‥?

 

 数河峠付近のポイントは、予想どおりサイシンは芽吹いたばかりのものから新葉が少し開きかけのものまで。それはまさにギフの発生初期から適期のころの状態。サクラの状態とも符合し、やっと季節を捕まえた!と思ったが、昼前から急に雲が広がり、もともと気温が低めなので曇ると全く飛びそうになかった。

ウソの食害著しいサクラ。
ウソの食害著しいサクラ。
近付いて見ると、まだ満開のように見えなくもない。
近付いて見ると、まだ満開のように見えなくもない。

《タンナカ高原》

 まだ昼を少し過ぎただけというのに、ここで潔く下見に切り替える。季節を捕まえたという安心感からかやっと自分を取り戻し、本来の素早い行動に出る(←単に「せっかちなオヤジ」とも言う)。 

 数河高原の北側には流葉山から連なる峰々を分水嶺として、その向こうに地元でタンナカと呼ぶ秘境があると聞いた。ブナの原生林があり、素晴しい自然が残っているという。数河高原から林道で繋がっていて、四駆なら問題なく行けるらしい。ギフチョウの記録は聞いたことがないが、地形図を見ていると例によって妄想が膨らんでワクワクを押さえられなくなった。

 行ってみると、思ったより簡単に「秘境タンナカ高原」に足を踏み入れることができた。しかし待てよ。ブナの原生林らしきものはあるにはあるが、沢の源流付近に帯状に少し残っているだけで、それ以外は普通に二次林である。少し下ると当たり前のようにスギの植林もある。近年に新しく造成されたらしい林道も、舗装こそされていないが環境保全に特別に配慮したふうもなく、無造作に山肌を削り取っている。これを「秘境」と呼ぶのは「卑怯」だ! 

沢の源流部のブナ林。
沢の源流部のブナ林。
無造作に造成された林道。
無造作に造成された林道。

 それはともかく、驚いたのは、数河高原と目と鼻の先なのに分水嶺を越えた途端に季節がガラッと変わったこと。タンナカは早春というよりまだ冬だった。残雪は意外に少ないのに冬だった。芽吹きが早いはずのブナがまだ芽吹いておらず、フキノトウの黄色だけがやけに目立つ。8日前の数河高原よりもずっと季節が進んでいないということは、ギフの季節には2週間早いということか。

 ところがである。峠付近に見事なヤマザクラの大木があり、ブナさえ芽吹いていない冬景色の中でチラホラ咲き始めていた。この分だと1週間後には見事な満開だろう。どうもこの春は各所でサクラだけ先走って咲いている気がする。示準植物と言われ、季節の目安となるはずのサクラにいったい何が起こっているのか。

 ともあれ、この日は下見に専念。林道をゆっくり車を走らせながら何度も車を停めて、沢沿いを歩いたり斜面に潜り込んだりして、夕方5時までたっぷり半日調査した。

見事なヤマザクラの大木。
見事なヤマザクラの大木。
チラホラと咲き始めていた。
チラホラと咲き始めていた。

 少し標高を下げた小さな流れ沿いの陽だまりで、いきなりサイシンの芽吹きを見つけた。ギフがいるならカンアオイがホストと思い込んでいたので驚いた。と同時に、もうひとつ驚いたことがある。標高を少し下げ、日当たりが良いとはいえまだ春とは言い難い景色の中で、サイシンが芽吹いている。先に「サクラだけが先走って咲いている」と書いたが、もしやサイシンも先走っていないか? そう考えると、先日来の数河高原周辺の「季節の違和感」の謎が少し解けたような気がした。

小さな流れ沿いの陽だまりで芽吹くウスバサイシン。
小さな流れ沿いの陽だまりで芽吹くウスバサイシン。

 夕暮れが近付いているらしい。谷間を吹き抜ける風が急に冷たくなってきた。着替えを済ませて今夜のねぐらへと急ぐことにする。コロナ禍にあって、人との接触を避けるためには当然のこと車中泊で、食料とコンロも積んできた。この時期、ひと晩ぐらい風呂に入らなくても垢で死ぬことはない。道の駅でのトイレ利用も極力減らすため、移動の前に物陰で用を足す。

 とその時だった。驚きのあまり下のチ〇コに加えて喉チ〇コも飛び出しそうになり、出ている最中のものは止まりそうになった。身も心も無防備な態勢で描く放物線のその先に、何とカンアオイがあった! あんなに探しまわって見つからなかったカンアオイが、探すのをやめた途端に足もとに生えていた。なんでこんな所にあるんだ。途中、冷たい雨に降られながら、半日頑張って探し回ったご褒美かもしれない。これで次回が楽しみになった。

探すのをやめた途端に足もとで見つかったカンアオイ。
探すのをやめた途端に足もとで見つかったカンアオイ。

[記録]5月3日(月祝) 同行者 なし

岐阜県飛騨市古川町数河高原 ギフ null

岐阜県飛騨市宮川町菅沼 ギフ null カンアオイ、ウスバサイシン確認

 


■ 5月4日(火祝) 飛騨荘川町のギフ(パート1)

 少し前に荘川町の「フタバ食いのギフ」の噂を聞いた。場所はどうやら荘川町牛丸付近らしい。牛丸ならこれまで何度も行っているので、真偽を突き止めるために行ってみることにする。

 この日は朝の冷え込みが非常に厳しく、朝起きると車のフロントガラスはガチガチに凍っていた。なのに荘川の道の駅の温度表示は朝6時半で1℃。いやいや、感覚的には絶対氷点下だよ。案の定というか、このあと少し気温が上がったはずの8時前にエンジンをかけた時点の車載の温度計は0℃。後日調べると、この日の六厩観測所の最低気温はマイナス2.6℃。あやうく車中泊の寝袋の中で凍死するところだったよ。

 さて、以前見つけた牛丸のカンアオイ自生地の奥で、見事なフタバアオイの大群落を見つけた。渓流沿いの土手一面にフタバアオイの絨毯(じゅうたん)が広がっており、これを食っていたらさぞかしギフは大発生しているだろうと思える。

 一方、カンアオイの新葉は全く出ておらず、木々の芽吹きもやや浅い。サクラは「散りはて」が多いが木によるバラつきが大きく、意外に花の残っている木もあって「葉桜」という感じではない。ひるがのから荘川にかけてのギフは発生が遅く、葉桜っぽくなってから出ることが知られており、サクラの状態からもややフライングと思われた。

 と考えると、フタバアオイは当地のギフが食草として利用するには季節感が合わないことになる。それに、そもそも当地のカンアオイ自生地とフタバアオイ群落は50mと離れていない。しかもその間はスギの植林で、植林によって暗くなってカンアオイが衰退する以前は両者は接していたと想像できる。

新葉を広げるフタバアオイ。
新葉を広げるフタバアオイ。
渓流に沿って広がるフタバアオイの “絨毯”。
渓流に沿って広がるフタバアオイの “絨毯”。

 よって「フタバ食い」とはとても考えられない、というのが結論。とはいえ、カンアオイで発生したギフチョウがフタバアオイの絨毯の上を飛ぶのを見たら、きっと妄想が膨らむだろうなあとは思う。 

 なお、この日は晴れて気温も上がったにも関わらず各所に蝶の姿が少なく、ミヤマセセリを1つ見た以外はコツバメも見ず、シロチョウ類も少なかった。そこへいきなりミヤマカラスアゲハが現れて驚いた。異常気象と天候不順で、蝶たちも季節が分からなくなっているのではないか。

[記録]5月4日(火祝) 同行者 なし

岐阜県高山市荘川町牛丸 ギフ null フタバアオイ確認

岐阜県高山市荘川町野々俣 ギフ null 

 


■ 5月9日(日) 飛騨数河高原周辺のギフ(パート4)

《数河高原》

 私は「しつこいオヤジ」なので、今シーズンここまで3日トライして全て討ち死にしている数河高原へ、またしてもやって来た。

 明け方からかなりの降水があったが9時30分にはピタリとやみ、すぐに晴れてきた。最初は低温だったが次第に気温も上がり、10時30分頃にはいれば必ず飛ぶコンディションとなった。しかし、30分以上粘ったが飛ばず。

芽を膨らませるハリギリ。
芽を膨らませるハリギリ。

 当地に4月24日と翌25日に来た時は、ヤマザクラが2-3分咲きで期待値込みで発生初期と思ったが、いま思えば未発生だったかもしれない。8日後の5月3日は未発生はありえず、飛ばないはずないと思ったが低温のせいか飛ばなかった。

 それから6日も経っていくら何でも遅いと思うわけだが、何の未練かこの日の朝、タンナカへ行く前に少し立ち寄った。最初に来た4月24日から数えて15日も経っているとは思えない風景で、コシアブラやハリギリが採りごろ。木々の芽吹きからは遅めとはいえ、多少スレた♀など出てきても何の不思議もないと思えた。

 神岡観測所のデータによれば、この間の天候不順ぶりはすさまじく、15日間で最高気温が20℃を超えた日は5日だけで、降水を記録した日が9日もあった。ちなみに前年の同じ時期の最高気温20℃超は8日で、降水を記録した日は2日である。こういう天候不順の年は本当に難しい。

 

《タンナカ高原》

 さて、あらかじめ予想したことだが、タンナカはギフの発生にはまだ少し早いだろう。早いと予想していてこの日にやって来たのは、下見に重点を置いていて採れることをあまり期待していないのと、6日前にチラホラ咲きだったので今ごろ満開になっているであろうヤマザクラの艶姿(あですがた)を見たかったからだ。

 ところが、件のヤマザクラは満開どころか散りはてて影も形もなかった。どうやら夜来の雨で残っていた花が全部散ってしまったらしい。それにしてもである。どうしてこうなるのか。この6日間は低温続きで昨日まで雨も大して降っていないはずだ。そもそも私の理解ではソメイヨシノよりヤマザクラのほうが開花期間が長いと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。

件のヤマザクラは散りはて。
件のヤマザクラは散りはて。

 人知れず 刹那に散りぬ山桜 遠路はるばる来たるを待たずに

 

 気を取り直して予定どおり探索すると、想像したとおりの場所でカンアオイを見つけた。しかし、予想に反してすでに芽吹いている。ギフチョウが飛ぶステージとしては春がまだ浅いと感じられる景色の中で、ヤマザクラは散り、カンアオイは芽吹いている。この季節の違和感をどう理解すれば良いのか。私の中で、もやもやを解消できないまま来シーズンへの宿題として持ち越してしまった。

新葉が芽吹くカンアオイ。
新葉が芽吹くカンアオイ。

[記録]5月9日(日) 同行者 なし

岐阜県飛騨市古川町数河高原 ギフ null

岐阜県飛騨市宮川町菅沼 ギフ null

 


■ 5月10日(月) 飛騨荘川町のギフ(パート2)

 この日の朝も先週の4日と同様冷え込みが厳しかったが、道の駅の温度表示は2℃。さすがにフロントガラスは凍っていなかった。ちなみに、この日の六厩観測所の最低気温はマイナス2.1℃で、先週より0.5℃高かった。

 さて、先週ヌルった牛丸はこの日もギフの姿なし。時期的には間違いなく出ているだろうが、スギが伸びて環境が悪化しているかもしれない。

 次に、野々俣のマイポイントの様子を見に行く。木々の芽吹きからは発生していることは間違いなさそう。カンアオイも芽を出していた。少しだけ粘ってすぐにピークポイントへと移動する。

 10時30分、ピークに到着。何もいない。と思って少し緩んだ次の瞬間、いきなり飛来してあえなく振り逃がしてしまった。

 結局それっきり次が来ないまま、ちょうど1時間が経過した。私は「筋金入りのせっかち」なので、来ない場所で1時間も粘ることなど通常ありえない。この日は昼前から曇る予報だったので、他を探す時間的余裕がなくズルズルと1時間粘ってしまったのだ。

 11時30分。まだよく晴れているが、予報どおりならもう間もなく曇るはずだ。待っていても来そうにないので下ることにする。これだけ晴れているのに上がって来ないのだから、もしかしたら下で溜まっているかもしれない。そう思って荷物をまとめ、尾根伝いに2、3歩歩きかけたその時だった。何気なく振り返ると、ただならぬ気配…。

 来たッ!

 1時間待って全く来なかったのに、帰りかけた途端にまとめて3頭がもつれ飛んできた。3列縦隊でこちらに向かって一直線に飛んでくるギフをひと振りで一網打尽にしようとしたが、なぜか1頭しか入らなかった。

野々俣の発生地ポイント。
野々俣の発生地ポイント。
新葉を出すカンアオイ。
新葉を出すカンアオイ。
野々俣のピークポイント。
野々俣のピークポイント。

 ダッセー。ダサすぎだぜ、お前。へなへなとしゃがみこんでいると、反対側の斜面のほうへ逃げたはずの個体が、私を慰めるかのように1頭だけ戻って来てくれた。今度はさすがに慎重にネットした。何だかどこかに監視カメラでもあって、私が帰りかけたのを見て喜び勇んで出てきたかのように思えた。この後、当然のようにしばらくその場で粘ったが、どこからか鳴り響く正午のサイレンと同時に雲が出て、ジ・エンドとなった。

[記録]5月10日(月) 同行者 なし

岐阜県高山市荘川町野々俣 ギフ 3♂(内1♂ボロリリース)

岐阜県高山市荘川町牛丸 ギフ null

岐阜県高山市荘川町野々俣サカシマ谷 ギフ null フタバアオイ確認